不動産売却相談室

Vol.16「相続した不動産を売却する際の注意点はありますか?」

Vol.16「相続した不動産を売却する際の注意点はありますか?」

配偶者や親から家(実家)を相続したものの空き家になっている…というご相談は、当社に寄せられるお悩みの中でも少なくありません。

思い出が詰まった住宅であっても、そのまま放置してしまうと老朽化が進み、資産価値が下がってしまうだけでなく、近隣住民の迷惑となってしまったり、固定資産税が最大6倍にまで膨れ上がってしまったりとリスクがたくさんあります。

今後も住む予定がないのであれば、早急に不動産売却の準備を進めるのが得策です。

こちらの記事では、年間600件以上の不動産取引を取り扱っている越後ホームズが、相続した不動産を売却する際に知っておくべきポイントをご紹介します。

実家を手放す方法は3つあります

大切な実家も活用できていなければ、空き家として所有者に負担がかかるばかり。ここからは、実家を売却する3つの方法をご案内します。

方法1:仲介もしくは買取で売却する

不動産売却には「仲介」と「買取」という2つの方法があります。

〈不動産会社に仲介を依頼〉

不動産会社に仲介を依頼をして、個人の買い手を探す方法が「仲介」です。売却価格は需要と供給が釣り合った市場価格を基に売主が決定します。購入希望者との取引が成立した際は、不動産会社へ成功報酬として手数料を支払います。

仲介の場合、物件を探している買主候補は、購入後すぐに暮らせる不動産を探している個人がほとんどなので、築年数が10年以内の比較的きれいな住宅の方が高く売れる可能性は高いでしょう。

ただし、住宅の老朽化が進んでいるからとはいえ、安易に更地にすることはおすすめできません。

というのも、高額な解体費用が売主の負担になってしまうだけでなく、建物がなくなってしまうことで住宅用地の特例から外れてしまい、固定資産税の税率がアップしてしまうケースも。

そのため、築年数が古い場合は、もう一つの売却方法である「買取」も検討してみましょう。

〈不動産会社に買取を依頼〉

「買取」は言葉のとおり、売主から不動産会社が直接不動産を買い取る方法のことを指します。

買い取った物件は不動産会社の負担でリフォームして再販・運用することを前提としているため、売却価格は市場価格の7割程度になる傾向があります。

平均でも売却までに半年程度かかる仲介と比較すると、買取は価格に納得できればすぐに売却することができるので、「手間なく不動産売却を済ませたい」「利益が少なくなってもいいから早く手放したい」という場合は、買取をしてくれる不動産会社に相談してみましょう。

方法2:相続を放棄する

実家を相続する前の段階であれば、相続放棄をして実家を手放すという手段もあります。相続放棄は、被相続人が亡くなってから3カ月以内であれば法律上認められます。相続を放棄できれば、固定資産税を支払う義務もありません。

しかし、相続放棄をするとその他全ての遺産も相続ができなくなります。

また、次に遺産を相続する法定相続人(民法で定められた遺産を相続できる人)が管理を開始するまで実家の管理責任はなくならないことも忘れてはいけません。

方法3自治体に相続した実家を寄付する

不動産は所有しているだけで維持費や税金といった金銭面の負担が発生します。

売って手放したくても、実家の立地や建物の状態から簡単には売却できず、頭を悩ませる方も多くいらっしゃいます。

そんな時、自治体への寄付を検討される方もいらっしゃいます。自治体ごとに判断基準は多少異なりますが、自治体への土地・住宅の寄付はハードルが高いといわれています。

資産価値のある建物か、有効活用が可能な土地か、厳密な調査と審査を受け、必要書類をそろえる必要もあります。

このように相続した実家を手放す方法は主に3つありますが、不動産会社に依頼をして売却をすることが現実的な選択肢といえるでしょう。

相続した不動産を売却する流れ

相続した実家を売却するには、各種手続きを行う必要があります。

被相続人が亡くなってすぐに心の整理をするのは大変なことですが、なかには期限が決まっている手続きもあるので注意が必要です。

「実家を売る!」と決めたらまずやるべきこと

空き家になってしまった実家を売る決心をしたところで、何から始めたらいいのか分からないものです。まずは5つの行動を実行しましょう。

①遺言書の有無を確認

遺言書があるか、ないかで相続の内容は大きく変わってきます。遺言書は大きな効力を持っているので必ず確認しましょう。

②実家の名義を変える

実家を売るには相続登記をして名義変更をする必要があります。

相続登記は自分で行うこともできますが、登記簿謄本の準備や登記申請などの手続きは慣れていない方が多いため、司法書士に依頼するケースが多いようです。

名義変更については、この後詳しくご紹介します。

③隣家との境界線を確認する

実家を相続して売却するのであれば、境界をめぐるご近所トラブルにも気をつけたいものです。

境界が確定していない場合、実家を売却したり賃貸に出したりした際にトラブルの原因となってしまいます。

境界が不明の場合は「土地境界確定測量」を依頼しましょう。

不動産会社へ査定を依頼する

実家の売却を決めたら不動産会社に査定を依頼してみましょう。査定の際に「仲介」と「買取」、どちらが適しているか相談することも可能です。信頼できる不動産会社を見つけられたら、適宜売却手続きを進めましょう。

相続した不動産の場合も具体的な売却の手順は通常の不動産売却と変わりません。詳しくは、Vol.1 「不動産売却の流れが分からず、何を準備すればいいのか分かりません!」でも解説していますので、合わせてご確認ください。

⑤内覧に向け、売却する不動産を片付ける

実家を住宅として売るためには、人が住める状態である必要があります。掃除や片付けをする時間がない場合は、専門業者に依頼することも可能です。

また、内覧などの売却活動を行うのは仲介の場合ですが、買取の場合は家具や不要品を残したまま引き取ってくれる業者もあります。「遠方に住んでいるため、実家を片付ける時間がない」「どこから手をつけたらいいかわからないほど物が多い」という場合は、買取を選ぶことで時間と手間を軽減できるでしょう。

実家を売るために必要な書類とは?

相続した実家を売るためにさまざまな書類が必要となります。

ここでは、名義変更の時、不動産売却の時の2つのタイミングで必要となる書類についてご説明します。

名義変更に必要な書類

前述したように、実家を売るためには名義変更が必要です。

相続のパターンによって、名義変更に必要な書類が異なりますので注意しましょう。

〈法定相続の場合〉

  • 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本
  • 被相続人の除住民票
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 相続人全員の住民票
  • 固定資産税評価証明書
  • 相続関係説明図(任意)

〈遺言による分割の場合〉

  • 遺言証書
  • 遺言者の死亡事項の記載のある除籍謄本
  • 遺言により相続する相続人の住民票
  • 固定資産税評価証明書
  • 受遺者の戸籍謄本
  • 相続関係説明図(任意)

〈遺産分割協議による分割の場合〉

  • 遺産分割協議書(相続人全員自署・実印押印・印鑑証明書添付)
  • 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本
  • 被相続人の除住民票
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 相続人全員の住民票
  • 固定資産税評価証明書
  • 相続関係説明図(任意)

なお、遺言証書が自筆遺言の場合、法務局に提出する前に家庭裁判所で検認を行う必要があります。検認とは、家庭裁判所による遺言証書の存在および内容確認のことです。

不動産売却の必要書類

相続した家や土地を売るためには、物件購入時の重要事項説明書や登記簿謄本、土地測量図などの必要な書類をそろえなくていけません。マンション・一戸建て・土地など、物件の種別ごとにも必要な書類が異なります。

〈不動産会社に売却を依頼する時に必要な書類〉

  • 登記簿謄本または登記事項証明書
  • 売買契約書
  • 物件購入時の重要事項説明書
  • 登記済権利書または登記識別情報
  • 土地測量図・境界確認書(マンション売却時は不要)
  • 固定資産税納税通知書および固定資産税評価証明書
  • 物件の図面(土地売却時は不要)
  • 設備の仕様書(土地の売却時は不要)
  • 建築確認済証および検査済証(一戸建て売却時に必要)
  • 建築設計図書・工事記録書(マンション、土地の売却時にあるとベター)
  • マンションの管理規約または使用細則(マンション売却時に必要)
  • マンション維持費関連書類 (マンション売却時に必要)
  • 耐震診断報告書(マンション、一戸建ての売却時にあると安心です)
  • アスベスト使用調査報告書(マンション、一戸建ての売却時にあると安心です)

〈買主に引き渡しをする時の必要書類〉

  • 本人確認書類
  • 実印
  • 印鑑証明書
  • 住民票
  • 銀行口座の通帳※銀行振り込み先情報
  • ローン残高証明書またはローン返済予定表
  • 物件のパンフレット(あると安心です)

相続した不動産を売却する際に申請できる2つの特例

実家を相続した際、相続税の申告期限の翌日以後3年以内に売却すると譲渡所得税が節税になる「取得費加算の特例」をはじめ、節税につながる特例があります。

2つの特例について、それぞれ見ていきましょう。

取得費加算の特例

相続により取得した不動産を売却して譲渡益(譲渡所得)が出た場合、譲渡所得税がかかります。

譲渡所得を計算する際に収入金額(不動産の売却代金と固定資産税等精算金の合計額)から取得費と譲渡費用を控除しますが、この取得費に相続税の一部を上乗せできる特例です。

相続財産の取得費加算の特例を適用した場合の、譲渡所得の計算式は下記を参照ください。

譲渡所得=譲渡価格-(譲渡費用+取得費)
=譲渡価格-(譲渡費用+被相続人から引き継いだ取得費+譲渡資産について支払った相続税)

〈特例の適用を受けるための要件〉

  • 相続や遺贈により財産を取得した者であること。
  • その財産を取得した人に相続税が課税されていること。
  • その財産を、相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡していること。

相続税の支払いが発生した場合は、適用の申請ができないか確認しましょう。詳しくは、国税庁のホームページをチェックしてください。

相続した空き家の3,000万円特別控除の特例

相続によって手に入れた実家(空き家)や土地を売却した際に、譲渡所得から3,000万円を控除できる特例です。

空き家を売却した時だけでなく、空き家を解体した更地を売却した場合にも利用できるので、相続によって使う予定のない住宅や土地を手に入れた方におすすめの制度と言えます。

ただし、この特例にもさまざまな適用要件があります。相続した空き家や売却時の状況によっては特例を利用できないため、確認しましょう。

〈家屋または敷地の要件〉

  • 家屋が昭和56年5月31日以前に建築されたこと。
  • 区分所有建物登記の建物ではないこと。
  • 相続の開始の直前において被相続人以外に居住をしていた人がいなかったこと。

〈特例の適用を受けるための要件〉

  • 売った人が、相続または遺贈により被相続人居住用家屋および被相続人居住用家屋の敷地等を取得したこと。
  • 相続の時から譲渡の時まで事業の用、貸付けの用または居住の用に供されていたことがないこと。
  • 譲渡の時において一定の耐震基準を満たすものであること。
  • 相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること。
  • 売却代金が1億円以下であること。
  • 売った家屋や敷地等について、相続財産を譲渡した場合の取得費の特例や収用等の場合の特別控除など他の特例の適用を受けていないこと。
  • 同一の被相続人から相続または遺贈により取得した被相続人居住用家屋または被相続人居住用家屋の敷地等について、この特例の適用を受けていないこと。
  • 親子や夫婦など特別の関係がある人に対して売ったものでないこと。

相続した不動産を売却する際の注意点

不動産売却を進める前に、相続した不動産を売る際の注意点があります。

相続した実家に住む場合と住まない場合では税金特例が異なる

相続した実家に相続人が住み、その家を売却する場合の扱いはマイホームの売却と同じです。

マイホームの売却は、なるべく税金を発生させないようにするための政策的な配慮があり、利用しやすい複数の節税特例が用意されています。

相続した実家は3年以内の売却がお得

相続した実家を売却するのなら、相続税申告期限の翌日から3年以内に売却するのがおすすめです。

特例の説明で触れたように「取得費加算の特例」というものが適用できるためです。

特例を活用することで相続税も経費にでき、売却益が減って譲渡所得税を安く抑えられます。

新潟で不動産売却を考えるなら越後ホームズに相談を

今回は親から相続した不動産を売却する際の注意点についてご紹介しました。

相続や不動産売却は、人生で何度も経験するものではありません。困った時に頼りになる不動産会社を見つけることも、不動産売却で後悔しないためには非常に重要です。

新潟で不動産売却を検討している方は、越後ホームズまでどうぞお気軽にご相談ください。分からない点や疑問に思う点に不動産の専門家がわかりやすくお答えします。

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